[politics]人口は都市に集中すべきか?それとも地方を育てるべきか?

人口の都市集中が必要だ – 池田信夫 – アゴラ

を読んで、少し思ったことを書く。


極端な両論

この手の話で議論が出る時、得てして、二つの意見が出がちだと思う。

つまり、

  • 賛成:高い生産性を持つ経済システムの構築のためには都市への集中は避けられない。地方を守り、都市を滅ぼせば、それは悪しき平等主義であり、結局全員が不幸になる。
  • 反対:過度の集中は都市機能の低下をもたらす。それに地方を完全に切り捨てることが出来ない以上、日本は元気にならない。第一、美しい日本の田園風景を破壊するのか。

の2点である。


この2点は、どちらも筋が通っているように思える。


すなわち、この両論が共に弊害の多い極論であることが問題なのだろう。

答えは真ん中に


上の両論は、どちらも正である。都市への過度の一極集中は、空中と地下をフル回転しても限界がある。


東京は、ビジネスにとって間違いなく効率的な都市だが(NHKスペシャル沸騰都市」TOKYO は面白かった。 http://www.nhk.or.jp/special/onair/090216.html)、1時間以上掛けて通勤するビジネスパーソンが多いことを考えれば、通勤時間をどれほど有意義に使ったとしても、ひとりあたりの無駄な時間はどうしても発生していると考えるべきであろう。


ならば、答えは既に多くの人が指摘しているように、やはり間をとった策ではないのか?


つまり、


分散された中核都市への強い集中と、その衛星都市としてのコンパクトシティへの弱い集中である。

過度の集中を避けつつ、人口密度が低い非効率的な地域を減らす。逆に、人口密度が減った地域では、大規模の専業農家林業を配置することで、効率を高める。


これが、良策と思われる。


そのための施策

では、そのような状態を実現するのは、どうしたら良いだろう。


一番、簡単な方法は税制で動かすことである。つまり、コンパクトシティとしたいエリアを地価や面積あたりの消費税収入などに基準に設定し(恣意的に設定すると、クレームを取りまとめられなくなるため、客観的な数字が必要。)、自然と動かすようにする。


例えば、

  • 指定市街地内で暮らした場合の税金を控除する。
  • 引っ越してきた場合には補助金。(ここあたりは、携帯のMNPと同じ)
  • 郊外では分散した農地に対して負荷が掛かるような税制を引く。(面積あたりの純利益で控除額を設定するとか。)


といった税制が考えられるだろう。肝心なのは、人口を集中させたい市街部と、ひとりあたりの所有地を集めたい郊外部に対する施策を”同時に”実行することである。



特に高齢化の中では、世代交代の際に、狙った方向へと誘導する施策が重要である。相続税が払えなくて、大規模郊外型スーパーに変わってしまっては元も子もない。

また、無理やり動かされた商圏に商店街が安心して、高価格で日常品をただ売るだけの街となってしまっては、それもわざわざ移ってきた人が不便になるだけである。
中核が出来てくれば、西側と東側が争うようにしても良いし、守られた中での商売なのだから、税率を上げても良い。いずれにせよ、競争する環境を作る必要がある。



青森などが成功した例だが、こうした例を増やしていくことが必要である。

http://www.city.aomori.aomori.jp/compactcity/machi.html

注意点


こうしたことを実現するためには、地域への権限委譲が必須条件となるだろう。

なぜなら、全国一律似たような形でショッピングモールやマンションが立ち並ぶようになれば、それは多様性を失わせることになる。(日本中の似たような公園のように。)


多様性を失い、日本中にそっくりの街が出現すれば競争軸はひとつとなり、結局相対的に大きな街への魅力が増大し、再び一極集中が始まってしまう。

簡単に比較できない多様な競争軸の中で、個々の要素に魅力を感じる人が、移動し、定着し、それぞれの都市独自の文化を生み出すことが、結果的にソフト時代の日本の競争力を築くことになるだろう。


国がコントロールしすぎ?


ここまで国がコントロールするのは、社会主義じゃあるまいし・・・、という意見もあるかもしれない。
ただ、私は、「規制自体は悪いことではない。」と考えている。


悪いのは、既得権益者によって変化を阻害する守りの規制である。つまり、自由競争の中で圧倒的勝者が決まったために、市場が動かなくなった場合には、より望ましい方向に向けるべく規制を掛けるべきである。

一方で、規制により、競争が一切無くなったために、改善がなされなくなった場合には、規制を外し、新しい競争をもたらすべきであろう。



規制の有無ではなく、施策の結果による競争の有無を基準とすべきだと思う。