テレビ局は「視聴率」の窪地にはまって動けないのでは?

悪化するテレビ局の売り上げ

テレビ局の収益が急激に悪化しているようだ。

テクノロジー : 日経電子版

このことは、アメリカの動向などから以前から予測可能だったこととはいえ、業界関係者でもスピードの速さには戸惑っているのかもしれない。

私はテレビ局が本来のコア・コンピタンスを見つめなおせば、今回の波は大したことではないと思っている。素人の浅はかな考えなので、きっと多くの見逃しがあるのだろうが、素人だからこそしがらみに思考が邪魔されないというメリットもある。

視聴率の窪地

今回起きたことには、先例がある。言ってみれば、DVDが出るときに映画業界が大騒ぎをしたのと似たような構造であるように思える。


要は

「映画館で見てもらえなくなる」→「(youTubeなどに上げられてしまい)テレビの放送時に見てもらえなくなる」

の理論であり、

テレビ局に本来望まれている

A. 「視聴者の望むコンテンツを届けること」
を軽視し、

B.「特定の時間で特定の場所で見てもらうこと」

を重視した結果が今のインターネットや携帯などに追い込まれた状態だと思う。


映画と同様に優良なコンテンツを作れば、コンテンツ販売で後から結果は付いてくる。勿論、そう単純にはうまくはいかないだろうが、アマゾンのように関連したコンテンツをうまく繋げることで、視聴者の興味・関心空間を拡大させることができ、マッチング精度を上げることができれば、最終的なパイは増えるはずなのである。


なぜ、Bを重視してしまうるかといえば、それは番組の評価尺度である「視聴率」(から計算されるGRP)が下がるからである。


では、本来のテレビ局にとっての番組の評価とはなんだろうか?

タイムスパンの違いで考えてみると、番組の評価は以下の4段階があるように思う。

  1. 放送時の番組の視聴率
  2. 放送後の番組の視聴率(HDDレコーダー、投稿)
  3. DVDや関連コンテンツの売り上げ
  4. 長期的な放送したコンテンツの世界観に対する興味関心の拡大、マッチング精度を上げるための視聴者データ

勿論、2を利益に繋げるためには、何らかの仕掛けがいる。
この仕掛けは、依然書いた

youTubeとテレビ局は最高のパートナーになれるのに。 - 情報流の流れに身を任せ。

あたりがいいと思う。


こういう考え方をしてみると、現在の視聴率は、本来測定しなければならない利益貢献力とは次第にずれはじめたものになっているのではないだろうか。

つまり長期的には利益が出せる方法があるのに、測定指標が著しく短期的に偏っているために、正しい行動を起こせない。
いわば『視聴率の窪地』にはまった状態とも考えられるのである。(これは、人事考課尺度を失敗し、企業組織が崩壊する場合ともよく似ている。)

今後に向け

最後にまとめると、テレビ局への提案は以下の2点である。

  • 非同期を前提としたビジネスプランに転換するべき。
  • そのためには、測定尺度を視聴率からもう少しタイムスパンの長いものも含めた汎用的な形に変えること。


ここでいう同期は、時間を発信側と受けて側が合わせる意味であり、非同期とは、発信側と受けて側が自由な時間で発信・受信をすることである。
携帯での通信量でメールが通話を逆転したように、「応酬によるすり合わせ」を必要としない場合、メールのような非同期通信の方が利用者の負荷は低くなる。


「何時からの放送を見てくれ」
というテレビ局側の要望は
「何時何分に電話するから、必ず取ってくれ。取ってくれなければ、二度と掛けない」

という身勝手な企業側の要望に過ぎないのである。(ただし、スポーツやニュース速報など同期性が重要なコンテンツは別。)

予想

視聴率に変わる長期的な視野も含めた指標への転換には、広告主からの圧力でおそらく始まるだろう。その時、長期的な広告の露出が出来、効果が測定できるよう手法を用意できたところが、テレビ局の中で勝ち組になるだろう。
それが、テレビ局単体で実施することになるのか、Googleなどの専門家と組むことになるのかは、まだ、分からない。いずれにしても今年年末には何らかの動きがあると思う。