NHKスペシャル「グーグル革命の衝撃」、要約 と感想

NHKスペシャル、「グーグル革命の衝撃」をみて、要約と感想を書いておこうと思います。

要約

番組自体は、あえて話を前後させたモザイク状の見せ方をしていたようなので、少し順番を直してまとめましたが、大体、下記のような内容でした。

【導入部:『検索』が人々のライフスタイルを変え始めてた。】

まず、番組は、ハロウィンで集まる若者を映し出すところから始まります。
そして、そこで着る衣装などを買うとき、アメリカでは8割の人が検索サービスを利用している、といったことを例にして、「検索」が、世界を大きく変えてきているという導入部から始まります。

次に、携帯の記事を作成することで、Google Adsenceで月収90万円近くの収入を挙げ、多くの決断に「検索」を利用し、Googleに中毒といってもいいほど依存している若者として、ジョン・ゲールさんという若者が紹介される。

SEM(企業 と Google その1)】

企業対Googleの話として、SEM(Search Engine Marketing)の話が紹介され、この話が比較的中心的になります。

Googleの上位に載らないと、企業のホームページはこの世に存在しないのと同じになる。といったSEM提供の会社が紹介され、大きな変化は、消費者側だけでなく、企業を大きく巻き込んでいる流れであることを、ここで示しています。

Adwords/Adsense(企業 と Google その2)】

SEMではなく、Google Adwords/Adsenceの話も紹介されます。

珍しい花の種を販売している中小企業の急成長を例に、ターゲット広告の効果として、

  • 広告をクリックした人の1/10が種を購入している。
  • 業績は3倍になった

といった話があり、検索キーワードの争奪戦が始まっていることが紹介されます。

Googleという会社とは】

人材の募集で、{問題}.com と看板を出し、{解}.com に人材募集を載せるという募集をするなど、トップクラスのコンピューターエンジニアが集まる会社として紹介されます。


その中では、おもちゃを置きながら働いている社員(あえてなのか分からないが、ちょっと浮いている感じを受ける。)や、限界まで才能を発揮したいと意欲に燃えるエンジニアが紹介されていき、やがて

Googleのミッション
『全世界の情報を整理・体系化し、誰もが使えるようにする』
エリック・シュミットCEOによって提示されます。


創業時の話からは、PageRankの紹介(ものすごく端折っているため、誤解を与えそうである。)、続いて、100を超えるルールが検索結果を決めており、そのルールは一切公開されていない点をあげ、Googleの問題点へと次第に話がシフトしていくきます。

Googleの問題点】

Googleの影響力が強くなりすぎたことに対する問題点として、

  • 検索のルールが公開されていない点。
  • 検索の結果は、Googleが自由に変更できる点として、
    • 政府の意図が介入していると疑問視されている1例として、中国の天安門事件が中国版Googleで表示されないといった有名な例。
    • ページに不正をしていたとGoogleが判断された場合、検索対象から外され業績が悪化するという所謂Google八分の例

このGoogle八分の例では、

Google言論の自由を制御していることが問題だ。」と、Google八分にあったキンダー・スタート社、ビクター・グッドマン社長の話が出てくる。



(余談)ちなみに、グーグルが中国進出する際には、

    • 中国の人々がGoogleを使えない状態

    • 中国の人々が検閲によって部分的に表示されないページがあってもGoogleを使える状態

との間で、どちらが中国に住む人達のためになるだろうと考えた末に、苦しい決断だったという話は、CNETあたりにあったと思う。

それを言わなかったのは、NHKの意図なのか、Googleの意図なのか、(僕の記憶違いなのか。)、 さて・・・・。



Googleの今後、社会とのかかわり】

最後に、巨大になりすぎた「検索」に対して、どのように個人は対応していくべきか、という話が出て番組は終了します。


まず、Googleがさらに個人の情報を集めようとしている具体例として、無料のWiFiを張り巡らせ、利用者の位置情報を取得することにより、より的確なターゲット広告をうつ事業への拡大、携帯への進出の話があり、

Google側の話として、

もっと情報を預けてくれれば、Googleはより有用な情報を提供できる、
(結構傲慢な感じです。英語が全部マスクされているけど、翻訳は大丈夫なんだろうか?とちょっと心配になりました。)

  • 副社長の話:

Googleは、より多くの情報をもち、よりターゲットを絞って情報を送ることが出来るようになる。
PCに関わらず、いつでも、どこからでも、Googleを利用できるようにする。
全ての答えをGoogleは持っている。

  • Googleの夢を自由に書き込んだホワイトボード

Google政府、Google通貨、株式市場を支配(コントロール


の3つの話がキーとなり、今後のGoogleの方向性が示される。

そして、それに対して、我々はどのように対応していくべきなのか(乗るか反るかですな。)、という課題をあげ、最後に、ゲールさんが再び登場し、
クレジット情報の管理をGoogleに預ける話が出てきている。
われわれは、どこまで情報を預けるのか、「記憶」まで預けようとしている、
検索とどのように向き合っていくべきなのか。。。

として、番組は終了します。

番組の感想

えーと、いきなりなんですが、とても楽しみにしていただけに、がっかりな内容でした。

とはいえ、わずか50分。それも、Googleを知らない人、普段検索をしない人も考慮して番組を作ることを考えれば、ある程度仕方ないか・・・、

自分で作ると想像しても、上記の制限を考えれば、確かに、他のまとめ方は無かったかも・・・、とは、見終って、落ち着いてから思ったことです。


残念だった点は、以下の三点

  • Googleが許可した初めての長期取材という割には、Googleの内情がほとんど出てこない。結局のところ、許可はもらったものの、ほとんど取材は出来なかったのではないか?という印象を受けた。
  • SEMの話は、Googleの影響力の拡大を示唆する上で、有効な見せ方だと思う。

だが、なにせ古い。
現在起こってきているソーシャル・ウェブ・サービスの大きな流れから考えれば、もう少し、Adwords,Adsenseの仕組みや、M&Aの展開などに時間を割いてもよかったのではないか、と思った。

  • 以上を踏まえての3点目なのですが、マクロ的な視点でもうすこし話を整理してほしかった。
    • Google Adsence-Adwordsのサービスとは、ターゲッティングの精度を上げたことで、広告市場のパイ自体が増加し、それを現在埋めていっている段階にあり、他社もそれを狙っているという、広告ビジネス全体から見たときの大きな流れ。

(特に、Google/Yahoo!/Microsoft三国志の様相を呈してきている検索市場争いは、とても面白い。)

    • キーワードの販売システムを始め、全て自動化するというGoogleの企業方針。このことが、収穫逓増型の強固な利益獲得手段となっている一方、ひとりひとりに細かい対応をしないという、番組の中ではGoogleの傲慢さともみえる背景がある。
    • そして、広告ビジネスによって安定した収入を得てから、将来の脅威となりうる企業を次々と買収していったことといった、ビジネス面での金融と企業戦略の使い方が、技術信仰の会社という面を考えると、ずばぬけてうまくいっている。

M&Aは、企業の多角化という点ではしばしばリスキーだが、ミッションを元にぶれが少なく(社歴の短さを考えればあたりまえともいえるが。)、
技術者の楽園であると同時に、ビジネスについてはプロに委ねているという点があるため、単なる無邪気な科学者の集団ではないという点もGoogleを特徴付ける重要な要素だと思う。

最後に

この番組を観て、「そっかGoogleすげ〜。こえ〜。」というのは、非常に間違っているだろうな、というのが番組後、すぐに思いついたことです。


ソニーがいい例ですが、誰もが「いい」と言い始めたときこそ、足元をすくう要素を見ておいたほうがいいと思うというのが、僕の考えです。


これは、その企業が図に乗ったためというよりも、むしろ、「うまくいきすぎた」企業に対して周りの認識が変わることで、環境が急激にその企業専用に共構築を始め、より居心地のいい環境となる。
しかし、その結果として大きな別の流れが起こったときに乗り遅れやすくなる、といったことが起こりうるのではないか?と僕には思えるのです。



現在のGoogleで考えると、いくつか足元をすくわれそうなことが浮かび上がります。


ひとつは、ソーシャル系のサービスに思いのほか乗り遅れていること。Bloggerがさえず、SNSも比較的早い段階でorkutが立ち上がった割には、その後しぼんでいる。
このことは、全てを自動化する方向にあるため、一般人への対応は落とさざる終えないことがネックとなっている可能性がある。


Googleの創業のきっかけになったPageRankは、それまで、HTML解析、自然言語解析によって、行ってきたロボットによる検索ランキングを、ハイパーリンクの構造を最重視することによって生み出された。

ハイパーリンクは、そのページの作成者がリンク先を「良い」と思って張るものであり、いわば、それを解析して、いいページを探すということは、

「良いページは、誰か(この場合、他のWebページ作成者)の意見(リンク)を参考にすればよい」

ということに他ならない。


はてなブックマークなどのソーシャルブックマークは、それをさらに広げ、

「良いページは、誰か(この場合、他のブックマーカー)の意見(ブックマーク)を参考にすればよい」

という点から、ページの評価しており、評価者のカバレッジが広いと同時に、Googleよりも、受容的な情報収集ニーズへの対応力も高い。


このソーシャル系サービスへの進出の遅さと、受容的な情報ニーズへの対応の不足は、今後、Googleの大きなネックとなる可能性を含んでいる。


ふたつめは、ローカライゼーションの遅さが少しずつ出てきている。
システムのコアを全世界で共通化しているせいか、USでのサービスリリースから、他国へのリリース時間が長くなってきているように思える。
日本では、Yahoo!が激しくローカライゼーションしており、対照的で面白いが、ある程度きままなローカライゼーションをシステムに入れ込めるかどうか、も判断基準となりえそうである。


Webはリアルを巻き込みながら、ネットワークが最適に自己組織化し、必要に応じて階層化する集合知へと発展し続けているというのが僕の認識である。

その大きな潮流の中で、検索やGoogleを捕らえて行くいく必要があるだろうと思いました。