今更ながらの Web2.0。 簡単なまとめ。

Web2.0の自分なりのまとめとして、半年くらい前に書いたやつだけど、意外とまだ通用するかなと思い、はてなに引越ししました。

=========================================================================


 ここ、半年以上、流行り言葉、いわゆる”バズ・ワード”になっているのが、『WEB2.0』である。
ここまであっという間に流行した言葉も珍しいと思うのだが、「ロングテール」に続いてそれをさらに包括する用語として、ティム・オライリーが最初に言った言葉である。

(※WEB2.0をまとめたものについては、

  • O'Reilly氏による「Web2.0とは何か」のポイント(前編)

http://internet.watch.impress.co.jp/static/column/web20/2006/02/27/

  • O'Reilly氏による「Web2.0とは何か」のポイント(後編)

http://internet.watch.impress.co.jp/static/column/web20/2006/03/06/
が入門的でよくまとまってます。)


この言葉が流行った理由は、おそらく単純で、

オライリーは、


「もう、WEBは最初の段階とは違う次の段階に入ってのではないか? いわば、Windowsが、98から2000/XPになったかのように、WEB自体のバージョンがあがったと言ってもいいんじゃないか?」


という意味で、


『WEB - Version 2.0』


という言葉を投げかけてみたのに対して、多くの人が「確かに最近のWEBをみると、そうかもしれない・・・。」と賛同したことによると思われる。

多くの人が、そう感じたきっかけは、いくつかあったと思う。
箇条書きにすると、

  1. 従来は自分のPCにインストールしてから使っていたようなサービスが、Ajaxを利用したGoogle Mapや、Flashを利用したサービスなどにより、ブラウザとネットワーク環境さえあれば、かなり似たようなサービスが出来るようになったこと。
  2. wikipedia のような集合知のサービスが拡大したこと。
  3. Blogに代表されるCMS(Contents Management System)が普及したことで、HTMLをしこしこ書くことが無くなり、多くの人がWebで情報発信できるようになったこと。
  4. FlickrMySpacemixidel.icio.usYouTubeはてなブックマークのようなソーシャル系のウェブサービス(ソーシャル系サービスの定義については、後述。)が誕生してくる。


といった点になる。


段々と整理していくことにするが、まず1.から始めてみる。



WEB2.0という言葉に多くの人が賛同したきっかけとしては、とにかく 1.が大きかったように思う。Webサービス構築に関わったことがある人ならば、Google Map( http://maps.google.co.jp/ )のブラウザ上でドラックアンドドロップでぐりぐりと操作できる地図の衝撃は大きかっただろう。

この衝撃の本質は、次の2点に集約できる。

  • 同期通信から非同期通信への転換。

従来のウェブは、地図の下に矢印ボタンがついてあり、右と押すと、ページが指し換わって地図の右方向を移した「新しいWEBページ」が表示される。これに対し、ウェブページに明確な通信指示の合図を出さなくても、非同期に、現在表示してるWEBページ上でデータの差し替えを行っている。

(※ 同期通信の代表は電話です。話す間はお互い回線を開いておき、よ〜いドンで開始します。非同期は、メールがそうですね。こちらは送りたい時間にデータを送っておく。相手は、見たい時間にデータを開き、相手が今見られるかどうかに関わらず、返事を送る。ウェブも、同期通信のため、送信ボタンを押したら、ぼけ〜っと、返事を待つものだったのですが、Ajax は、リクエストをするだけして、返事を待たずにブラウザ上は一定の操作し、返事が返ってきたら、その時にページ内のデータを更新するというわけです。)

  • 標準化の精度が比較的高かった。

「ブラウザをアプリケーションのプラットフォームに!」という流れは随分前からあった。ネットワークで動くプログラムを当初から前提として誕生したJavaアプレットがその代表だったのだが、Version競合が起こりやすい、Microsoftが訴訟の結果、JavaのヴァーチャルマシーンをIEに標準で入れなくなったこと、SUNが頑固・・・などが響き、どのブラウザでも誰でも扱えるものではなかった。
Ajaxもブラウザの違いには苦しんでいるが、比較的カバー率が高くすることができる。Flashも高いカバー率とバージョンアップ時のインストールの手軽さもあり、標準化されている。


このうちの2点目が、他の点でも共通するキーポイントである。

Google Mapには、ユビキタスへの足がかりという大きな特徴もあるが、話の焦点がずれすぎるので、とりあえずおいて外します。)


そこで、キーワードの第1は「誰でも」として、以下、話を展開することにする。




WEBのような技術系の分野では、こと新しい技術については、「自分で調べろ。」「過去ログを探せ。」など、比較的初心者に厳しい世界があった。


WWWの誕生当初、大学ではじめてWEB(ブラウザは、モザイクだった。)を見せてもらったことがあるのだが、そのとき、大学の先生が言った言葉は以下のようなものだった。


ブラウザの画面を見せながら、先生は、確かこう言ったのである。


「分からないことがあったら、ここに質問をすれば、全世界の人から回答してもらえる。」


(なんだこれは? パソコン通信にしては画面が綺麗だ。それに全世界だって!?)と思い、「おぉっ」と驚く学生達。


しかし、そのあと、続けて


「ただ、自分で下調べもしないで、下らないことを質問したりすると、全世界の人から総スカンをくらうので、気をつけるように。」



全世界から総スカン・・・。(-_-;)



今考えれば、先生は、変な書き込みをしたりしないようにと、ちょっと脅したつもりだったのだろうけど、結局、これに恐れをなして、大学時代に質問を投げることは無かった。




まぁ、要はこういうことである。




Web系の技術にある程度免疫のある人にとっては、ちょっと調べてすぐ使えた技術が、多くの関わりの無い人にとっては、長い間、とても大きな壁になっていた。



この壁が、a.技術の進展と、そしてb.「普通の人」のことを考えてサービスを考える人(好奇心ではなく、ビジネスとしてWebを考える人)の増加で、ゆっくり下がっていき、感覚的には、2年くらい前に、いわば「ティッピング・ポイント」(これもバズワードです。爆発的に普及するか、まったく普及しないかを分ける点とでもいえばいいのかな?詳しくは、
なぜあの商品は急に売れ出したのか―口コミ感染の法則 (単行本)  マルコム・グラッドウェル
http://www.amazon.co.jp/gp/product/487031469X/ref=pd_sim_b_3/250-0237989-6773048?ie=UTF8


まで。

物理でいうところの「相転移点」− 水が水蒸気に変わる温度とかの−みたいなものです。

を超えた。




これが、最初にあげた1.から3.が起こった一番大きな要因だと思う。




別にWebに詳しくなくても、他のことで詳しい人はいくらでもいるわけで、こういう人たちの参加が可能になったことで、Wikipedia( http://ja.wikipedia.org/ )のようなサービスも波にのった。


そして、

  • 「誰でも情報発信が出来るようになった。」
  • 「誰でもWebを使って簡単に使える便利なサービスを受けられるようになった。」


という環境が整ったわけである。


(※もちろん、「誰でも」というのは少しオーバーで、htmlを手書きしていた頃のWEBと比較して格段に多いというくらいの意味である。)



そして、現在は、それを前提とした上で、2段目に突入をしているとみるべきであろう。


WEB2.0」の用語に曖昧さを感じるひとつの要因には、以降であげていく新しいサービスと、それを可能にした要素的な技術・サービスの側面を混在させているところにもあるような気がする。
オライリーは、もう少し技術よりに使っていたようだったが、次第に、サービスよりに使われ方が変わってきたような気もする。)




さて、1段目で起こった「誰でも」の結果起こったことは、


「増えすぎた情報の量」


である。


重要かどうかに関わらず、情報は大量にとりあえず発信されてしまう。
そして、その結果、

  1. せっかく発信した情報を誰にもみてもらえない。
  2. どうやって情報をさがせばいいかわからない。


という発信・受信側からみた2つの問題が発生した。


これを解決すべく、原因でもある「誰でも」の力自体を利用しようとしたのが、現在のソーシャル系サービスである。
ソーシャルは、そのまま訳せば「社会的」という意味であるが、もともとは、人間関係のネットワークの意味合いが強く、学問としての「ソーシャルネットワーク」は、そのまま、派閥の実力者を探すというような方向が強い。

ソーシャルネットワークは、 

ネットワーク分析―何が行為を決定するか (単行本(ソフトカバー)) :安田 雪
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4788505843/sr=1-2/qid=1155916325/ref=sr_1_2/250-0237989-6773048?ie=UTF8&s=books

などが詳しいです。)


言い換えると、WEB上でのソーシャル系サービスとは、「複数以上の人の力を借りて、上記の2つの問題を解決するサービス」と言い換えることが出来るかもしれない。


まず、2.の受信側からの問題解決のために、個人個人が情報にタグをつけて後々の検索に役立てるようにするサービス「タギング」が登場した。


さらに、このタグ付けサービスを複数以上の人が使うことで、タグの人気投票のような形で、情報が自動分類されるともに、今、多くの人が注目している情報を浮き上がらせるサービスへと発展した。

(※この複数以上の人の力を利用した自動分類を「フォークソノミー」といいます。これは、今後流行る言葉でしょうね。分類法の「タクソノミー」と、人を表す「フォーク」の造語だったと思います。詳しくは、こちら 


ネット世界をタグで分類する「フォークソノミー
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20050207204.html


代表例が、はてなブックマークであるが、これの面白いところは、


「なぜ利用者は『タグ』や『コメント』をつけるのか?」


といった動機付けの部分である。


これまでのウェブサービスでも「@cosme」のようなクチコミ系の掲示板や、「amazon」、「価格コム」でも、情報に批評をつけ、サイトの分類方式に従って、評価の数値を一般個人がつけるサービスはあったが、これらは、いわば「情報発信欲」(もしかしたら、「自己顕示欲」も。)を満たす意味合いが強かった。


つまり、「人に勧めたい。」「自分の評価を伝えたい。」といった動機付けで書き込みを行うわけである。
その結果、これらのサイトには、一般人というよりかは、「批評家」タイプの人の書き込みが多く集まることともなった。


例えば、@cosmeで積極的に評価の書き込みをしている人は、「そのブランドの熱心な愛好者でその良さを人に伝えたい。」というよりかは、次々と新しいブランドを試して、自分の評価能力の向上と、さらに人がまだ注目していない「良いもの」を探すことに注力している人である場合が多かったりする。


ところが、最近出てきたソーシャル系サービスは、これらの「発信したい」という気持ちに加えて、「後々自分で探しやすいように。」という点が兼ねられている点に特徴がある。いわば、「どうせ忘れているであろう未来の自分が『あの時の気になった情報はどこだっけ。』と思った時に備えて、未来に情報発信を行っている。」と言い換えてもいい。(ブログ自体が、WebをLogするという造語であることを考えると、この保存しておきたい欲に対する需要は、もともと高い。)


このことが、批評家タイプ以外の人たちも巻き込んだ上で、”結果として”「みんなで分類。評価している。」ということが起こす仕組みをつくることとなった。そして、「みんなが使うから、よりサービスが使いやすくなる。」というメトカフの法則(コミュニティの価値はネットワークの参加者の2乗で現されるってやつね。)の実現に一役買ってるわけである。


このようなサービスが可能となった理由としては、第一段のキーワードの「誰でも」というところが、ベースになっている。


@cosmeや価格コムのようなコミュニティサービスに書き込まれた情報は、当然のことながら、企業側に対してマーケティング用のデータとしての提供を行うわけだが、そこにある多くのデータは、「情報発信したい人たちの批評家的な意見」へのバイアスを避けられない。


そのような意味から、「誰もが参加して、人が見る見ないに関わらずデータを付与している」というソーシャル系のサービスの優位性は遠からず、明確になってくると思う。




・・・少し話がそれました。




では、次に、これもWEB2.0と言われているmixiGREEなどのSNSのサービスに話を移します・


mixiGREEMySpace などのSNSサービスは、はてなブックマークのようなソーシャル系サービスとは、少し異なるアプローチから、

  1. せっかく発信した情報を誰にもみてもらえない。
  2. どうやって情報をさがせばいいかわからない。


の両方の解決を目指したサービスといえるでしょう。


はてなブックマークのような解決方法は、1)を、「後日の自分のために有効利用できるから、他人に見てもらわなくても構わない。」という解決方法だったが、
これを、SNSは、2)の情報探索の視点から、

  • 「自分の知り合いの発信する情報」、
  • 「自分の興味のあるコミュニティの発信する情報」


に絞り込むことで、

(しかも時間的な更新情報の絞込みも入ってます。 これは、同時期に拡大したRSS FEED系のサービスの特徴でもある。)

探索する情報の量を自分の好みに合わせてコントロールし、それによって、探索空間を減らすことに成功している。
調べる範囲を最初から絞ってしまえば、情報は飛躍的に見つけやすくできるわけで、これが、見つけられる側からすれば、実は1)の「見てもらえない。」という状態の解消にもつながっている。



SNSが爆発的に拡大し始めた時期に、その特徴を、


「紹介制だから、荒れにくいコミュニティ」


と言われていたのを鵜呑みにし、


「人数が増えたら、他のコミュニティサイトと一緒だ。」


と言っている人は結構いたが、SNSの特徴はそもそも紹介制にはなく(アメリカの定義では、SNS=紹介制という定義はどこにもない。)、


「人間関係という軸を用いることで、情報の探索空間を劇的に減らし、『情報を探しやすく』、『見つけてもらいやすく』する仕組みを提供した。」


そして、その結果として、


「見つけてもらいやすいことが、情報発信をよりしやすくしたため、コミュニティの質と量が自律的に自然増殖するシステムとなりえた。(先行者利得の増大)」


にあったわけである。




以上、Google Map から、mixiのようなSNSまで、サービスの参加者の数と特徴、情報の発信と受信の際の探索性という視点からみてきたのだが、


WEB2.0とはつまりなんだったのか?」


という点についての僕なりの解釈を最後にまとめると、

  • 多くの人が情報発信することでどんどん便利になるサービスを、WEBという情報共有プラットフォームを用いて、実現するサービス。 であり、
  • 上記サービスを実現させるために、a.誰でも使える技術。と、b.情報の探索空間を減らす、もしくは、人手によって自動で浮かび上がらせる技術と、仕組みづくり

を総称したもの。


というのが、シンプルな答えではないかと思う。


だから、


「はて。これはWeb2.0のサービスかどうか?」


と考えるときには、

まず、

  1. それは、多くの人が利用すればするほど、便利になるサービスかどうか?
  2. それは、情報を書き込みしたくなる仕掛け(見つけられやすさがあるか、ひとりだけで使っても便利かどうか)が備わっているか?


という2点に注目すれば、判定できると思われるのである。


同様に、「Web2.0系の技術かどうか?」という点では、

  1. これまでの技術的障壁が低下し、多くの人が使いやすくなる技術かどうか。
  2. 上述の2点をサポートできる技術かどうか。


という2点をおさえれば、とりあえずは、判定できる。


のではないかと思います。